tin can
むせ返るように リスが運ぶように
春が一気に 花の中に抜ける
準備が出来てないから
少し驚きもしない僕の心は
帽子の素材が 春には少しだけ 重たいと
恥ずかしそうに 信号が変わるのを
待つ間も 渡る間も
静かな笑い声とか
何かの宣伝カーとか
自転車のギアの音とか
そんなひとつひとつの
瑞々しさで
胸の中が 狂おしい
僕は 春が来て
僕は
ただここでこうして 帽子をかぶって
息詰まるだけで
春が来て 僕は 春が来て
失っていったものが 芽吹いていくのを
見ないように 薄暗い通りを選んで
イライラしながら タバコに
火をつけて
いつから こんなふうになっちまったんだろう
誰にも聞こえないくらい
小さく呻く